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今年やりたいこと

年明けて2週間、今更ながら2017年にやりたいことをまとめてみようかと思いました。

抱負なんて大それたものじゃないけど、空いた時間がある時に動く指針の一つとして。

 

・週1冊ペースで本を読む(年間52冊)

・月1回ペースで映画を見る(レンタル可)(年12本)

・月1回ペースで記事を書く(年12本)

・週1回TED Talkでのリスニング学習をする(年間55回)

・Travelling Without Movingの弾いてみたをアップ

・カメラを始める

・国内外問わず、最低1回旅行に行く

・歴史や人物などのテーマを予習してから、二月に一回ペースで美術館に行く(年6回)

・お気に入りの曲に動画をつけて、PVを1本作る

 

とりあえず思いつくところでこんな所かな

おおよそやりたい順で書いてますが、基本的には全部するつもり。

 

では今年一年頑張りましょう。

感想:言い寄る(田辺聖子)

世の中には二種類の人間がある。言い寄れる人と、言い寄れない人である。私にとって五郎は、「言い寄れない」人であった。

 

この本のエッセンスはこのフレーズに詰まってます。

この本を読むと、恋愛で幸せになれる人、強い人とは何ぞやという答えの一端を感じられます。そして「言い寄る」は、残念ながらそうはなれない多くの人が共感を覚える、影響力のある作品です。

 

言い寄る (講談社文庫)

言い寄る (講談社文庫)

 

 

恋愛をしたことがある人なら、気になる相手にアプローチをしたこと・されたことがあると思います。

したことがある人には分かると思いますが、アプローチをする側には絶対のルールがあります。それは、相手が「自分と釣り合う」ということです。

イメージしやすく極端な例を出すと、どんなに面食いな百戦錬磨のナンパ師でも道端で見かけたガッキーは絶対ナンパしない。顔、環境、社会的地位等々が釣り合わないから。釣り合いの取れない人との恋愛が最終的に幸せになれないのは一般的な感覚として共感する人が多いと思います。

 

冒頭のフレーズにあるように、この本の主人公、乃里子は釣り合いが取れなかった五郎には最後まで言い寄れませんでした。

一方で金持ち遊び人の剛や渋いオジサマの水野たち他の男とは簡単に肉体関係を持ちます。

じゃあ釣り合いが取れなかったその五郎という男はそんなに素晴らしい人間なのか、というと決してそんなことは無いと僕は思います。確かに真面目でギターも上手くてちゃんと働いてて、何よりお人よし過ぎるほど優しいけれど、どこにでもいる普通の男性です。

乃里子が言い寄れなかった理由は2つ。1つは二人の温度差、もう1つはこれまで投じた時間です。

 

1つ目について、まず、彼女は自分を悲劇のヒロインに見立てがちな部分を持っています。

「気が合うけれども、比較的どうでもいい人とは寝れる。けれども本当に大切な五郎とは踏み込んで話すことも難しい。」

「こんなに五郎を好いているし態度に出しているのに全然五郎は自分を向いてくれない。」

「自分がこんなに焦れる思いをしてるのに、親友の美々はいともあっさりと五郎と結婚しようとする。」

作品を読んでいる途中は全部高いハードルに僕も感じていましたけど、実はどれも大したことないんですよね。

現に終盤、五郎を失ってからは「今になってみれば、お情けの同情結婚でも何でも、良かったように思われる」と自分で述べてます。それに気づくまで、ずっと自分を悲劇的立場として見ていて、それを変えてくれる五郎のアクションを待ち続けてました。

でも五郎は最後まで動きません。だって乃里子を女として愛してなかったから、ヒーローになってあげられるほどの気持ちを持ってなかったから。

詰まるところ、乃里子は五郎を愛しすぎて、でも五郎はあくまで友人としての好意しか持っていなくて、二人は気持ちの釣り合いが取れてなかったんですよね。恐らく乃里子もそれを分かっていたからこそ、同程度の気持ちの表れとなるアクションを待っていたんだと思います。

 

そこまで分かってたなら早々に諦めるか、開き直って自分から告白でもすればいいじゃないか、という意見が出ると思います。

それを出来なくさせているのが2つ目の時間です。

誰でも「折角ここまでやったのに途中で諦めるなんて勿体ない」という感情を持ったことがあると思います(サンクコストコンコルド効果と言います)。

早い話、彼女は引くに引けなかったんですね。これまで五郎に向けてきた時間や気持ちの累積はもう気軽に表に出して全消費出来る程度のものではなくなっていた。

作品の中で「しんから惚れてる人間の場合は、これは失敗を許されない」とも言ってるように、乃里子は失敗が許されない段階に到達していました。それは、五郎と差があると上で書いた乃里子の気持ちがあるからで、その気持ちにたどり着くまで費やした時間があるからだと思います。

逆にかかったコストの少ない水野や剛には積極的ですし、剛を捨てようともしていました。

 

乃里子はどうすれば言い寄れたのか。

多分、ずっと昔の、五郎に惚れて間もない段階で言い寄るべきだったんでしょうね。

もしくは、気持ちを溜め込みすぎず、美々や剛といったほかの人たちに気持ちを小出しに言っておくべきだったと思いました。その辺のタイミング感や釣り合いのバランス感覚が(自他ともに割とどうでもいい)美々の方が恋愛強者だった、という感は否めないです。

けれど、僕を含めて世の中の人はそんなにうまく感情をコントロール出来ないし、タイミングを正確に見切れなくて、だからこの本は多くの人から共感されているんだと思います。

 

 

夏草や兵どもが夢の跡 - 感想:官僚たちの夏 -

 

官僚たちの夏 (新潮文庫)

官僚たちの夏 (新潮文庫)

 

 

1960年代、官僚たちは日本を経済発展させるため何を考えていたか。

彼らの考えや生き方は周囲からどのように受け止められていたのか。

官僚たちの夏はミスター・通産省(現経済産業省)こと風越信吾を主人公として、政府・財界などを舞台とした戦いを描きます。

以下ネタバレ有り。

 

私も読了後に知ったのですが、この作品は実話・実在の人物を題材にして書かれています。作中の風越が経験する苦労も人事も基本的にはモデルである佐橋滋さんに起きた出来事です。

しかしながら、この本は佐橋さんの伝記として読む作品ではないと思います。

これは世の中の多くのサラリーマンの人生が凝縮された本です。

官僚たちの夏を読むことで読者は官僚としての生きざまをリアルに追体験することができます。この描写のリアルさによって社会人の読者は仕事の苦労を風越と共有することができ、既に引退されている方々は自分の体験を呼び起こすことができると思います。

また、風越は一癖も二癖もある人物です。そのため周囲の評価や批判を気にしない生きざまに憧れつつも実行できない読者のIFとしての読み方も出来るのではないでしょうか(サラリーマン金太郎に近い楽しみ方かもしれませんね)。

 

一方で、実在の歴史を踏まえてるだけあって、60年前後の日本経済や政策に疎いとストーリーに入り込めない部分も多いように感じます。

逆に言えばその時代に理解の深い人にとってはこれ以上ないリアルが展開されていて、私のような当時を知らない人はこの本をきっかけに当時の出来事について調べることで歴史を想像することができると思います。

 

この作品の肝は、価値観と時代の変化、そしてそれに伴う風越の栄枯盛衰です。

一つの時代を作り、栄華を極め、やがて滅びるというのは歴史小説などでは定番ですが、これを現代社会の労働者に当てはめて書き切った点が個人的に目新しく、最後まで楽しめる魅力となりました。

作中に頻繁に出てくる労働への価値観として「無定量・無際限に働くもの」という言葉があります。この価値観こそが風越の正義であり、逆にこれにそぐわない片山などは実力以下の評価を下しています。

この価値観で大きなことを成し遂げることができた時代も確かにあったのですが、現実に、現代日本でこの考え方はワークライフバランスなどの新たな価値観のもとに否定されています。

この新旧二つの価値観の移り変わりの始まりの時代を描いたのが本作品です。価値観が変わるということ、その機微を適切に読めなかった場合にどのような結末をたどるのかということをこの作品で追体験できます。

 

社会人として働く人、日本経済や政策を勉強している人にはぜひ読んでみてほしい一冊でした。

感想:海の見える街

 

海の見える街 (講談社文庫)

海の見える街 (講談社文庫)

 

 

畑野智美さんの海の見える街を読みました。

「大人のための恋愛小説」とあらすじでも銘打っているように、登場人物は25歳~32歳前後の社会人です。

内容は4部構成になっていて、市立図書館の職員4人のそれぞれの目線から、一年間の物語を描いています。

 

舞台は海の見える街。

10年間の片思いに失恋した31歳の本田が一年契約職員としてやってきた春香と出会うことで物語は始まります。

メインとなる登場人物は上の本田、春香に加えて本田に、片思いする日野と危ない意味で子供が好きだが何事も抜かりない松田の4人。

 

この海の見える街、とにかく感情移入がしやすい。

年齢が自分に近い、というだけではなくやり場のない気持ちやそれぞれが持つ悩みが非常に等身大の人物として描かれています。

ずっと10年間好きだった主人公の中に残る未練、環境が変わり勢いで思いを伝えてしまう日野など、共感を覚える場面がいくつもありました。

 

そうした現実にいそうな人物たちの中、異色の存在として職場に入ってきた春香。

彼女は司書をやっている職場の人たちと全く別の価値観を持っていました。

始めはそうした環境に対して理解せず、自分の理屈で行動をしていました。

しかしながら本田、日野、松田たちと接するうちに価値観が広がり、これまでの自分の失敗を冷静に見つめることができます。

 

海の見える街は4人の視点を持ちますが、主人公であり狂言回しとしての役割も持つのが春香です。

それぞれの人物に感情移入しながら、徐々に登場人物に対する読者の理解が春香と共に深まっていき、最後はそうした価値観を携えながら春香の心境の変化を味わうことができます。

この本の最も魅力的な部分は、春香の過去と価値観が自然に移り変わっていくストーリー展開だと私は思います。

これまで自分はこうしてきた、良いか悪いかは分からなくともこれからも自分は自分のまま、という感性で捉えていた春香が、他人と深く分かりあうことで、結果的に自分自身を深く理解することになります。

 

こうした変化は大きな出来事で突発的に起こるのではなく、様々な連続で徐々にグラデーションのように起こりうるのだ。

そしてそうした変化を起こすためには互いに理解しようとする姿勢が大切なのだ、というようなメッセージを持つような恋愛小説でした。

非常に読みやすく、読了後には晴れやかな気持ちになれる小説でした。

 

 

設定・世界観:3/5

感情移入:5/5

ストーリー展開:4/5

読みやすさ:4/5

総合:4/5